◎冬型の気圧配置による高遠(一九九五年十一月九日)
十一月七日夜、大陸から進んできた低気圧は、日本海を北東進して八日09時にはサハリン南部に達し、中心気圧が九四八ヘクトパスカルと強い台風なみに発達しました。その後は九日にかけてオホーツク海南部でほぼ停滞しました。
このため冬型の気圧配置が強まり、日本海では一五メートル/秒以上の強風となり北日本は大荒れの天気となりました。
図3に各観測点の波高の時間変化を示しました。温海では、八日02時から急激に波高が高くなり始め、05時までの三時間に約四メートルも高くなりました。
なお、南から南西方向の海上が開けている松前では、低気圧の前面の南よりの風によって、波高が高くなり始めたのは温海より早い時間でした。温海、松前とも低気圧の通過後、一時的に波はやや収まりましたが、冬型の気圧配置が強まり西から北西の季節風が持続したため再び高くなり、温海では九日03時に八・一メートル(歴代二位)、松前では11時に七・五メートル(歴代二位)の波高を観測しました。
一方、尻羽岬では低気圧に吹き込む南西の強風により、八日03時ころから次第に波高が高くなりましたが、その後は面よりの風に変わったことから八日22時の五・八炉の波高をピークに徐々に低くなりました。
また、江ノ島では沖合の波高は五−七メートルになっていましたが、風が海岸から沖へ向かう西風(離岸風)であったため、波高は三メートル以下で経過しました。この低気圧による強風と高波で北海道南西部の日本海沿岸ではフェリーの欠航、潮風による停電等の被害がありました。
このように日本海側の観測点では、発達した低気圧や台風が北側を通過(大体東経一四〇度線)する時に短時問に波高が高くなり、ピークを観測するのが特徴です。前の事例では低気圧が急速に遠ざかったため、波は比較的短時間に収まりましたが、後の事例では低気圧が停滞してさらに発達したため、通過後により高いピークが幾つか観測され、しかも高波が長時間持続しました。
おわりに
各予報担当官署では、海岸線からおおむね二十海里以内の沿岸域を対象として波浪に関する予報、注意報および警報を発表しています。さらに気象庁では、毎日一回(台風接近時には二回)、沿岸も含む日本近海の沿岸波浪実況図(AWJP)および二十四時間予想図(FWJP)を、無線ファックス(JMH)で放送しています。
このうち実況図には、十一カ所の沿岸波浪計による観測値(有義波高、周期)が掲載されていますので、各観測点の特徴を考慮しながらの利用をお願いします。
*有義波高 ある時間内に観測された一つ一つの波を高い順に並べなおして、高い方から三分の一個の波を取り出して平均した波高のことを言います。なお、気象庁が天気予報等で発表する波の高さもすべて有義波高です。
(主任技術事門官)
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